なぜ美しいと思うのだろう
今年のお正月、たまたまエキサイトブログのピックアップ写真で目にしたのは
「THE PHOTO DIARY by CANON」のprado9991さんの一枚の写真でした。
初めは正直「あ、ゑり萬さんの帯揚げだなあ」くらいにしか印象に残らなかったのですが妙に気になり、美しい京の風景と舞妓さんや芸妓さんのポートレイトを何枚も何枚も見ているうちにだんだんその「奥深い美しさ」が輪郭を伴って浮き上がってきたような気がしてきたのでした。
舞妓さんのかわいらしさ、芸妓さんの大人の艶やかさと色気、美しい古典柄の着物、日本髪とそれらの装飾・・・もううっとりと眺めてはため息をついていました。
そこへ「ただならぬ雰囲気」を敏感に察知したオットが(邪魔しに)やってくる
オット「何見てるの?」
私「日本のマイコさんとゲイシャさんの写真だよ」
オット「ふーん・・・・」
私「綺麗でしょ」
オット「・・・・」
私「綺麗と思わない?」
オット「・・・いや・・・白いね」
私「奇妙に見えるの?」
オット「・・・・」 (彼がはっきり返事しないことはあまりない)
私「ほら、こんなのとか、こんなのとかは?」 (いろいろ写真を見せる私)
オット「・・・ああ、彼女は美人だね」
私は美人かどうかをきいたわけではないのだが。。。
ちなみに彼の一押しはこちらのお方↓
オットの妙に間をおいた返答の仕方、どっかで知ってるなあと思っていたら「生まれて初めて抹茶を飲んだドイツ人の反応」に近いことに最近気が付く。
曰く、「今までこのようなものは全く知らなかったので、いいのか悪いのか、好きなのか嫌いなのかその判断さえもわからない」という困った表情で目が中を泳ぐリアクション。私の気を悪くしたくないので「変・奇妙だ」という素直な感想を言えないでいるのかもしれない。
その点子供は正直である。
舞妓さんの写真を見せた瞬間、
「ぎゃはは~、白い!」
と笑って逃げていった。(苦笑)
確かに今の私たちの生活からは(おまけにドイツだし)あまりにもかけ離れているのはまあ、そうなのだけれども。
大きく張り出した髪型、ゴテゴテとした髪飾り、厚く白と黒と赤だけを使った化粧、全く機能的でない着物の着付け。。。「ナチュラル」と対極にあるもの。だけれどもやっぱり「美しい」と思う。
そのたたずまいと仕草をも含めてそこにあるもの
ふと「不思議なものだなア」という言葉を思い出す。
坂口安吾の
「桜の森の満開の下」の主人公の男かつぶやくフレーズです。
・・・・・・・・・・・・・・・
女は櫛(くし)だの笄(こうがい)だの簪(かんざし)だの紅(べに)だのを大事にしました。彼が泥の手や山の獣の血にぬれた手でかすかに着物にふれただけでも女は彼を叱りました。まるで着物が女のいのちであるように、そしてそれをまもることが自分のつとめであるように、身の廻りを清潔にさせ、家の手入れを命じます。その着物は一枚の小袖(こそで)と細紐(ほそひも)だけでは事足りず、何枚かの着物といくつもの紐と、そしてその紐は妙な形にむすばれ不必要に垂れ流されて、色々の飾り物をつけたすことによって一つの姿が完成されて行くのでした。
男は目を見はりました。そして嘆声をもらしました。彼は納得させられたのです。かくして一つの美が成りたち、その美に彼が満たされている、それは疑る余地がない、個としては意味をもたない不完全かつ不可解な断片が集まることによって一つの物を完成する、その物を分解すれば無意味なる断片に帰する、それを彼は彼らしく一つの妙なる魔術として納得させられたのでした。
・・・(中略)・・・
自分自身が魔術の一つの力になりたいということが男の願いになっていました。そして彼自身くしけずられる黒髪にわが手を加えてみたいものだと思います。いやよ、そんな手は、と女は男を払いのけて叱ります。男は子供のように手をひっこめて、てれながら、黒髪にツヤが立ち、結ばれ、そして顔があらわれ、一つの美が描かれ生まれてくることを見果てぬ夢に思うのでした。
「こんなものがなア」
彼は模様のある櫛や飾のある笄をいじり廻しました。それは彼が今迄は意味も値打もみとめることのできなかったものでしたが、今も尚(なお)、物と物との調和や関係、飾りという意味の批判はありません。けれども魔力が分ります。魔力は物のいのちでした。物の中にもいのちがあります。
「お前がいじってはいけないよ。なぜ毎日きまったように手をだすのだろうね」
「不思議なものだなア」
「何が不思議なのさ」
「何がってこともないけどさ」
と男はてれました。彼には驚きがありましたが、その対象は分らぬのです。
・・・・・・・・・・・・・・・
私の気持ちもこの「男」の気持ちに近いのかもしれないなあ。
「美しい」って一体どういうことなんだろうと改めて思う。
長々と書いてしまいましたが(汗)、これで終わりにします。
ラストは私の好きな舞妓さんの写真
彼女の写真を見ていたらいつもなぜか懐かしいような、切ないような気持ちになる。
大人になるまでの舞妓さんの時期は本当に短くて、その一瞬の美しさはとどまらないからこそより強く感じるのかもしれませんね。
最後になりましたが快くお写真を貸してくださったprado9991さんに心より御礼を申し上げます。本当にありがとうございました。
★今回の記事の写真はすべてブログ
「THE PHOTO DIARY by CANON」のprado9991さんよりお借りしたものです。
是非こちらのブログもご覧下さいね。
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