白に薄紅、そして蘇芳
私がドイツに住むと決めた時、「これだけは」と日本から持ち帰った本の中に
別冊太陽の「源氏物語の色」という本がありました。
別冊太陽の創刊60号記念に「源氏物語」の本文と「延喜式」にのっとって、「源氏物語絵巻」を手がかりに登場人物たちの衣装の再現が試みられています。原材料の採取から始めて糸を染め、襲(かさね)の色目が出るように特別に織られた布はため息の出るような美しさ。
88年出版で大学生の時に自分で買った本なのですが、当時かなり力を入れて出版されたとあって写真も文章もいささかも古びていません。何年かごとに取り出してはふと眺めたくなる不思議な本でもあります。
この本の中で特に目を引くのはやはり、若き光源氏が政敵の右大臣に招待されて「花宴」で着用した「桜襲(さくらがさね)」
ただ単に「白と赤の布を重ねる」といっても、重なり具合や光の加減で色彩が微妙に変化することが写真からもよく伝わってきます。千年も前にこのような技術があり、美しさを感じる心があったことは本当に素晴らしいですね。(是非実際に本を手にとって見られることをお勧めします~)
葡萄染(えびぞめ)の小袿、薄蘇芳の細長、、、源氏物語の作者の紫式部は紫の上に「梅」のイメージを重ねていたのでしょうか。彼女にはこういう配色がよくしてあるそうです。着物の上に黒髪を流れるように置いたら・・・と、想像するだけでも楽しい。
先日久しぶりにこの本を読み返してみたら実際に「色の重なり」を見たくなり、襲のイメージでなんとなくお菓子を作ってみました。白、薄紅、蘇芳色のういろう生地を薄く伸ばしてかさねます。
銘は「一重梅」
中は黄身餡。大きさや生地のずらし加減、餡の高さが数ミリ違っても全然印象が変わってしまうので、納得できる形になるまで結構時間が掛かりました。
持っている漠然としたイメージを形にするのってやっぱり難しい。ああでもない、こうでもないとぐずぐずこねくり回し、8個作り上げた時にはもうヘトヘト。(汗)
一定の量とクオリティを保って作れる職人さんはやっぱり凄いな思います。
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